とても怖いマンガを描いていた知り合いの話。
とある知り合いでAさんという方がいた。その人はたいそう絵が上手だった。その人の絵は完成度が高く、また華のある絵柄だった。美術系専門学校卒、現職もデザイン系ということもあって、その人の同人誌はまるで商業誌のような華やかさだった。
ただし、絵はものすごおおおおく上手なのだが、話がこれっぱかしも面白くなかった。いや、面白い面白くないというレベルではなかった。決して話がわからないというわけではないのだが、会話のシーンがなんとなく進んでいてペラっとページをめくると次のページがない。あれ?と思って前のページへ戻ると実は前のページで終わりだった……というようなオチがわからないマンガだったのだ。そんなに絵が上手なのだからちょっとシリアスっぽい雰囲気でごまかせるような話を描けばいいのにと私は常々思っていたのだが、彼女は何故かシリアスは描かずいつもギャグ(コメディ?)のようなものを描いていた。(それはきっと長いページ数のものが描けなかったからに違いない。彼女のマンガはたいてい2〜3ページ、長くて5ページ程度だったから)いやしかしあれはギャグとは言えないだろう。オチがまるでないのだから。オチがわからない、どこで終わりなのかわからないマンガというのは怖い。得体の知れない不安が読後感として残る。私がそれを知ったのは彼女のマンガからだった。
ただし彼女の本はページの大半がイラストとフリートークでマンガのページは割合的にそう多くなかったので、彼女の本が売れていても私は不思議だとは思わなかった。あれだけ絵が上手なのだから。イラスト集として見れば十分。マンガもマンガだと思わず絵だけ見ればいいんだ。そう思っていた。彼女のサイトの掲示板や拍手では「マンガが面白かったです〜〜」というコメントがとても多かったりするが、「面白かったです」なんていう具体的じゃないアイマイな言葉は単なる誉め言葉の代表として使われているだけに違いない。だってアレが面白いはずがないのだから。そう思っていた。
ところが、彼女がだんだん売れるようになってなんだか壁で列作っちゃったりするようになったりし出した頃、私は自分に疑問を持つようになった。「もしかして……あのマンガ面白いのか?」そう、私にはわからないだけで、他の人たちには面白く見えているのかもしれない。私はつまらないと思ったけれど、私の読解力や感性が世間一般と大きくずれているだけで、普通の人には面白く読めるのかもしれない。…………もし、もしそうなのだとすれば、私が自分では面白いと思って描いたものも、他の多くの人には通じていないのかもしれない。ふと生まれた疑問に私はとてつもない恐怖を感じた。自分の感性、自分の読解力が世間と相容れない。そうそれは、私が見ている世界はニセモノで、他の人には違う世界が見えているのかもしれない、そんな恐怖。
共通の知り合いに意見を求めたところ、Aさんの作品に対しては全員が私と同じ見解であった。そこで自分の読解力不足という線は消えて少しほっとしたのだが、それでもまだ心の底に疑問は残っている。私たちにはわからないオチがAさんの作品にはあって、Aさんの多くの読者たちにはそれが読み取れているのではないか。Aさんの読者は若い人が多い。若い感性でしか読み取れない何かがあるのではないか。
……というわけで、彼女のマンガは私にとって(色々な意味で)とても怖かったのでした。
2008年09月08日
恐怖を感じた同人誌の話
Comment
1. Posted by
Emu
2008年09月08日 13:13
商業誌の場合は、「誰にでも面白く読めるように工夫されている」というテクが必要なので、面白く読めているという事実は、感性とはまた別の理由によるものではないかと思います。
同人誌の「面白い」は、二次創作の風向きによる瞬間風速だったりするので、面白い・面白くない以外にも、所有欲を刺激する部分があるのではないでしょうか。
画力が飛び抜けていれば、グッズとして保管したいという気分にもなります。
同人誌の「面白い」は、二次創作の風向きによる瞬間風速だったりするので、面白い・面白くない以外にも、所有欲を刺激する部分があるのではないでしょうか。
画力が飛び抜けていれば、グッズとして保管したいという気分にもなります。
2. Posted by
夜沙
2008年09月08日 13:28
コメントありがとうございます。
最初に書いた文章では思っていた事が書ききれていなかった気がして、少々追加して改訂してしまいました。
ちょうど私が改訂を書いている間にコメントいただいてしまいました。申し訳ございません。
私も所有欲であったりイラスト(絵)目当てという理由で同人誌を買う事も多々ありますのでEmuさんのおっしゃることよくわかります。
ただ、私の感じている「面白さ」は完全なる普遍ではなく、もしかしたら「感じる面白さのツボ」の違いという点において世間的には私の方がマイノリティなのかもしれない、という疑問がちょっと怖かったと。やはり初めの文では言葉が足りなかったようです。すみません。
最初に書いた文章では思っていた事が書ききれていなかった気がして、少々追加して改訂してしまいました。
ちょうど私が改訂を書いている間にコメントいただいてしまいました。申し訳ございません。
私も所有欲であったりイラスト(絵)目当てという理由で同人誌を買う事も多々ありますのでEmuさんのおっしゃることよくわかります。
ただ、私の感じている「面白さ」は完全なる普遍ではなく、もしかしたら「感じる面白さのツボ」の違いという点において世間的には私の方がマイノリティなのかもしれない、という疑問がちょっと怖かったと。やはり初めの文では言葉が足りなかったようです。すみません。
3. Posted by
mkm
2008年09月08日 14:31
本当に単に絵が上手いから売れているというだけ
なのかもしれませんよ?
誰もその人の漫画を読んでいるわけではなくて
あくまでも眺めているだけなのかもしれません。
(それはちょっと寂しい話ですが)
でも漫画という形態を取っている以上、作者の方は
それで何かを伝えるツールとして使われていると
いうことで、それを考えると夜沙さんがお感じに
なられた恐怖というのは、読んだことのない私にも
何だか怖く思えてきます。まったく"解らない"ものを
漫画として描くという行為は作者さんの中でどの
ように昇華(消化?)されているのか。
でもそこまで疑問なのだったら、共通のお知り合いの
どなたかが作者さんにそれとなく聞いてみるというのは
どうでしょう。何で漫画描くの?とかじゃなくて
漫画描くの好き?って聞けば角も立たないと
思いますし。それで好きって返ってきたとしたら
それは少なくとも作者さんにとっては表現として
やりたいことで必要なことなんでしょうし、それを
理解出来るか出来ないかっていうのはもはや、
解らないとお感じになられた夜沙さんの手からは
離れた問題だと思います。
なのかもしれませんよ?
誰もその人の漫画を読んでいるわけではなくて
あくまでも眺めているだけなのかもしれません。
(それはちょっと寂しい話ですが)
でも漫画という形態を取っている以上、作者の方は
それで何かを伝えるツールとして使われていると
いうことで、それを考えると夜沙さんがお感じに
なられた恐怖というのは、読んだことのない私にも
何だか怖く思えてきます。まったく"解らない"ものを
漫画として描くという行為は作者さんの中でどの
ように昇華(消化?)されているのか。
でもそこまで疑問なのだったら、共通のお知り合いの
どなたかが作者さんにそれとなく聞いてみるというのは
どうでしょう。何で漫画描くの?とかじゃなくて
漫画描くの好き?って聞けば角も立たないと
思いますし。それで好きって返ってきたとしたら
それは少なくとも作者さんにとっては表現として
やりたいことで必要なことなんでしょうし、それを
理解出来るか出来ないかっていうのはもはや、
解らないとお感じになられた夜沙さんの手からは
離れた問題だと思います。
4. Posted by
2008年09月08日 19:39
その作家さんの御本を本気で「面白い」と感じてる人からしたら、
夜沙さんの御本こそ「何を言いたいのか分からなくて怖い・気持ち悪い」
と感じるかもしれませんね。
投げっぱなしギャグというジャンルもあることですし、
笑いのツボ(だけでなくシリアスのぐっとくるツボも)は
本当に人それぞれなので、
理解できないものがあっても仕方ないと思います。
商業であっても理解できないギャグマンガはありますもの。
例えば私は「コボちゃん」とか「サザエさん」とかそんな感じの
とんちの効いた淡々とした日常ギャグが面白いとは思えません。
が、長年愛され続けてるということは
それを面白いと思って買い支えている層がいるということでもあります。
夜沙さんの記事を読んでいると、なんとなーく
「私も周りの友達もあの本はつまらないと思っている。
あれを買ってる層って何なの?絵以外見るところあるの?」
みたいな、その本に対する価値観の押し付けを感じてしまいます。
そういうつもりで書いたのではないのかもしれませんが…。
夜沙さんの御本こそ「何を言いたいのか分からなくて怖い・気持ち悪い」
と感じるかもしれませんね。
投げっぱなしギャグというジャンルもあることですし、
笑いのツボ(だけでなくシリアスのぐっとくるツボも)は
本当に人それぞれなので、
理解できないものがあっても仕方ないと思います。
商業であっても理解できないギャグマンガはありますもの。
例えば私は「コボちゃん」とか「サザエさん」とかそんな感じの
とんちの効いた淡々とした日常ギャグが面白いとは思えません。
が、長年愛され続けてるということは
それを面白いと思って買い支えている層がいるということでもあります。
夜沙さんの記事を読んでいると、なんとなーく
「私も周りの友達もあの本はつまらないと思っている。
あれを買ってる層って何なの?絵以外見るところあるの?」
みたいな、その本に対する価値観の押し付けを感じてしまいます。
そういうつもりで書いたのではないのかもしれませんが…。
5. Posted by
yuh-suke
2008年09月08日 23:37
私の周りでも大手サークル談義をしているとこういう話はありますねえ
絵が徹底的に魅力が無くて漫画も面白く無いとかでしたら、疑問が増幅されるのですが
もともと、同人誌には突発イラスト本とかそういうカテゴリがあることですし、「あの作家さんの新しい絵が見たい」だけで買っている人は沢山居ると思うのでそういうことに価値を見出すかそうでないのかではないでしょうか?
絵が徹底的に魅力が無くて漫画も面白く無いとかでしたら、疑問が増幅されるのですが
もともと、同人誌には突発イラスト本とかそういうカテゴリがあることですし、「あの作家さんの新しい絵が見たい」だけで買っている人は沢山居ると思うのでそういうことに価値を見出すかそうでないのかではないでしょうか?
6. Posted by
あい
2008年09月10日 16:56
正直、どこが怖いのかわかりません。
完全にタイトル負けしてる記事ですね・・・
完全にタイトル負けしてる記事ですね・・・
7. Posted by
Silvermoai
2008年09月11日 00:07
まさにその「華やかさ」を求めて人が集まっているんだと思います
スペースのレイアウトも上手なんじゃないかなあ
特にコミケのようなお祭り要素の強いイベントだと
祭りの記念、みたいな要素も大きいと思います
読み応えの部分じゃなくて、ムードメーカーみたいな所で評価されてるんじゃないでしょうか
そのムードも含めての読後感があるんじゃないかと
スペースのレイアウトも上手なんじゃないかなあ
特にコミケのようなお祭り要素の強いイベントだと
祭りの記念、みたいな要素も大きいと思います
読み応えの部分じゃなくて、ムードメーカーみたいな所で評価されてるんじゃないでしょうか
そのムードも含めての読後感があるんじゃないかと
8. Posted by
猫まっと
2008年09月14日 21:53
本体を見てないので「連想」w
どっかのマンガに思ったことなどー。
ああ、これMTVビデオではないか!と。
フラッシュバックのように(?)画面で切り替わる、それぞれはつながってるような、そうでもないような、でもスタイリッシュで音楽と併せて見てるとキモチよひ。
と、まあそのときは、とっても判った気になったんだけど、それが当たっているのかどうかはやっぱり「不安」なのであまり言わない方向でw
どっかのマンガに思ったことなどー。
ああ、これMTVビデオではないか!と。
フラッシュバックのように(?)画面で切り替わる、それぞれはつながってるような、そうでもないような、でもスタイリッシュで音楽と併せて見てるとキモチよひ。
と、まあそのときは、とっても判った気になったんだけど、それが当たっているのかどうかはやっぱり「不安」なのであまり言わない方向でw
9. Posted by
スープ船長
2008年09月24日 13:00
今まさに漫画を描いていて
「この話面白いと思う人いるのか?」
「わけわかんない、といわれるんじゃ???」
とかの恐怖と戦っている最中です。
商業誌と違い、同人誌は
「上手でなくても描きたいことを描ける」
のがいいとこですからね。
絵だけ、話だけ「好き」は
十分ありえると思います。
でも
「この人の絵が好き」→「話が面白ければもっと好き」
はもっとありえると思います。
「この話面白いと思う人いるのか?」
「わけわかんない、といわれるんじゃ???」
とかの恐怖と戦っている最中です。
商業誌と違い、同人誌は
「上手でなくても描きたいことを描ける」
のがいいとこですからね。
絵だけ、話だけ「好き」は
十分ありえると思います。
でも
「この人の絵が好き」→「話が面白ければもっと好き」
はもっとありえると思います。
10. Posted by
とっしー
2008年10月10日 03:59
この作家が好き!>だからこの作家に褒め言葉を!
イラスト専業の方の場合;この絵がキレイです!
小説書きの方の場合:あの話が素晴らしいです!
漫画メインの方の場合:前回の本面白かったです!
↑のパターンが褒め言葉の王道だと思います
漫画(とくにギャグマンガ)の場合、絵が美麗ですね!
って褒めるのも頭おかしい人にしか思えないし
それでもなにか感想を伝えたいとなると
面白いですね、が一番無難かと思います。
実際面白いか面白いかとかじゃなくて、好きという言葉がそういう形に表れているだけ、と言うこともあるんじゃないでしょうか。
イラスト専業の方の場合;この絵がキレイです!
小説書きの方の場合:あの話が素晴らしいです!
漫画メインの方の場合:前回の本面白かったです!
↑のパターンが褒め言葉の王道だと思います
漫画(とくにギャグマンガ)の場合、絵が美麗ですね!
って褒めるのも頭おかしい人にしか思えないし
それでもなにか感想を伝えたいとなると
面白いですね、が一番無難かと思います。
実際面白いか面白いかとかじゃなくて、好きという言葉がそういう形に表れているだけ、と言うこともあるんじゃないでしょうか。















