2008年06月08日
推定1%の希望
先日、とある同人作家さんとお酒の席をご一緒する機会があった。その方は私よりちょっと年上で、同人誌においては私よりはるかに長く活動していらっしゃる、同人歴では大先輩にあたる方だ。そしていつも私の知らない面白い話を色々聞かせて下さるので、その方とお会いするのはとても楽しみだったりする。

先日の酒席では、彼女はこんな話を聞かせてくれた。
まだ20代前半だった頃、彼女は同人誌からスカウトされて、とある出版社で担当編集者がついてネームを提出しチェックを受けたりしていた。そんな中で、作品ネームのある1シーンについて編集者から「ここのシーンはわかりにくいので、これこれこーした方がいいよ」とアドバイスを受けた。対し彼女は「確かにその通りだ。編集さんの言った通りの方がわかりやすい」と思ったのと同時に「そのシーンでくどく説明するのはダサい」と思ったのだそうだ。そのシーンではたとえわかりにくくとも、いやわかりにくい演出をあえてしたいと。そんなわかりにくい演出をあえてした、その意図をわかってくれる人にだけわかってもらいたいと。そしてその後、彼女は担当して下さった編集さんに「同人誌で描きたいものがあるから」とお断りをして商業誌への道から降りた。より大勢により普遍的にわかってもらえる面白い作品を提供するのが商業誌ならば、自分の求める道はそれとは逆方向にあるのだとその時に気がついたから、と彼女は語った。それから彼女はずっと、そして今でも同人誌で作品を発表し続けている。


そんな話を聞いた後日、今度は別の友人と酒を飲みに行った時の事。今度はやはり私より少々年上で、プロの小説家をやっている人だったのだが、そんな彼に私は「なんで小説家になろうと思ったの?」と聞いてみた。すると彼は「自分が若かった頃はまだインターネットもなく同人誌の世界も今ほど広くなく、長編小説を発表したい、誰かに読んで欲しいと思ったらプロになる以外に道がなかっただけ。もし今のようにネットや携帯小説のような気軽に発表出来る媒体があったらプロになろうとは思わなかったかもしれない」と答えた。聞いた私は、なんて単純でわかりやすい動機だろう、と思った。そして更に彼に、先程の同人先輩から聞いたエピソードを話してみた。彼の意見は「自分だったら、編集さんの言う事がもっともだと思ったら言われた通りに直すなあ。それで読者に話が伝わりやすくなるならその方がいいから」との事だった。


同人誌先輩の彼女の言う事も、プロの小説家の彼の言う事も、どちらも間違っていない。どちらも正解だ。そして彼らに共通しているのは「自分は何が書きたいのか」「自分の作品を誰に見せたいのか」「誰にわかって欲しいのか」という対象が明確だということだ。私はそんな彼らがとてもかっこいいと思った。


私自身はと言えば作品に対してそこまで確固たる自信やこだわりを持つに至っていないので、誰かに「こーした方がいいんじゃない?」とか言われたら「そーかも……」とホイホイ直してしまいそうである(笑)。プライドを持って自作に取り組む上記の彼らがかっこよく見えるのはそのせいだろう。
そんないまいちプライドがない私としては、100人読んで99人が「わかんねーつまんねー」と思ったとしても、1人わかってくれる人が「わかるー面白いー」と思ってくれればそれでいいんじゃないかなーくらいの気持ちでいる。果たして割合として1%いるのかどうかわからないが、0でなければそれでいい。割合を上げるよう努力する事は良い事だと思うが、その努力はちょっと方向性を間違うと「100%にどーでもいいと思われてしまう」無難ではあるが面白くも何ともないものになってしまう危険性がある。私のような凡人は特にその危険性が高いので、あまりそちらにこだわらずに「0%じゃなきゃいいかー」くらいの気持ちと自己満足で執筆活動を続けた方が精神衛生上にも結果的にも良いような気がするのだ。「どうせ趣味なんだし」という言葉は嫌いだが、気楽に物事を構えることも時には必要だろう。

そうは言っても完全に0%確定の自己満足オンリーだったらやっぱりちょっとツライわけで、たまーーーーにでも「面白いです」「次の新刊も楽しみにしてます」と言って下さる人がいてくれるおかげで少なくとも0%ではない、1%の存在を信じる事が出来て、私は今日まで同人誌を続ける事が出来ているんだなーと思う。(それはこのブログも同じかもw)

99%に「つまらねー」と思われたり嫌われたりするのは辛い事かもしれないけれど、それを恐れていれば1%にわかってもらえる喜びもない。そして私は今日も99%に「つまらねー」と思われるであろう原稿(や、ブログの記事)を黙々と書いているわけだ。
ていうか、夏コミ無事スペース受かったのでがんばって描くぞー!1%の理解者との出会いを願い夢見つつ!
15:31 │comments(4)trackback(0)    ブログパーツ
同人誌制作・創作 


TrackBack URL

Comment

1. Posted by 毛利未来     2008年06月13日 02:15  5
こんにちわ。初めまして。

【推定1%の希望】を拝見して、思わず涙ぐむほどに同感して安堵しました。

私は色物駄文書きで、プライドの無い話を書くのだけはイヤなのでポリシーとコンセプトだけはガッチリとした話を書いているつもりではいます。
でも、やっぱり色物なので一般受けは難しくて時々、視線が痛い時があります…。

同人誌は自分の書きたいことを自由に書くのが同人!

と思ってやっていますがそれでもやっぱり人の目は気になるし、さりとて自分のポリシーは譲りたくない…。
100人のうち99人に受け入れられなくても1人の方に受け入れられて「こういった話もありですよね。」などと言われると本当に嬉しくて、次も頑張ろう!と思う気力が沸いてくる。

1%の希望…。
それは何よりも大きな励みで、喜び!

それを改めて気付かさせてもらえました。
本当にありがとうございました!
2. Posted by sefi     2008年06月13日 23:35
1%でも共感してくれた人がいたなら
描いた人からすれば、とってもうれしいですよね。

でもその次に描く作品って
同じ1%の人たちに向けてか
前回とは違う1%に向けてかって、迷いませんか?

迷うというか
一部のコアなファンを満足させるのか
それともまた新しいファンと出会うのか

そういう考え方って、趣味とか言うレベルじゃなくて
もうアーティストですよね。

3. Posted by にしわき     2008年08月19日 21:10  5
初めまして。激しく同意します。
私自身は絵も下手でスカウトされた経験も全くありませんが、やはり1%の読み手に面白く思って欲しくて描いてます。
たまに大手を羨ましく思いますが、無難な話より自分が面白い物を描き一人でも良かったと言って貰えたらすごく嬉しいです。
夏コミ後は自分の作品の短所ばかり浮かび凹んでましたが、こちらのブログに励まされました。有難うございます。
4. Posted by 長老     2008年11月22日 23:24  4
はじめまして
記事見させてもらいました。

「100%の人にどーでもいいと思われてしまう」無難ではあるが面白くも何ともないものになってしまう危険性がある。

は確かに思います。
同人の世界に限らず、きっとそうだと思います。
琴線に触れた1%の人への「こだわり」を大事にするのって、大変だけど、貴重ですよ。

まっ、「負けても終わらないけど、諦めたら終わり」とともいいますし、続けること、重要なんですよね。肩張らずに頑張ってください。

(推定)1%の希望、私も希望を持って頑張る気持ちができました。ありがとうございます。

Send Comment

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
 
Attention
このページは同人誌・オタク・腐女子系話題を取り扱っています



FC2ブログランキング

にほんブログ村 漫画ブログ 同人へ
Profile