3ヶ月かかって描いた原稿を、印刷代を少しでも浮かすために
印刷所のパンフレットで各社比較検討した上で割引入稿していた。
がんばった甲斐あって少しずつ部数が増えていった。
なじみの印刷所が出来て、わがままが通るようになった。
極道入稿が増えた。割り増し料金も払った。
それでも部数は増えていった。
裏表紙は描くのが面倒なので
表紙のハーフトーンスクリーン処理をアップで貼り付けて
ロゴでごまかすようになった。
奥付や中表紙も描く時間的余裕がないので
サイトにUPした絵を適当にレイアウトして使いまわすようになった。
少し部数が減ったが大勢に影響はない程度だと思っていた。
表紙を色塗りするのも面倒になり、特殊紙に一色刷りになった。
少し部数が減ったが大勢に影響はない程度だと思っていた。。
本文のトーン処理が間に合わず、グレースケールエアブラシ塗りになった。
少し部数が減ったが大勢に影響はない程度だと思っていた。
本文のペン入れが間に合わず、鉛筆下書きスキャンになった。
少し部数が減ったが大勢に影響はない程度だと思っていた。
新作の原稿を描く気力がなくなり、再録本を出した。
大いに部数が減った。
再録本は良くないと一念発起したが長く続かず
オフ入稿は諦めてコピー誌になった。
表紙はフルカラーコピーして、両面コピー中綴じを化粧断ちして
きれいに製本した。
また少し部数が減った。
フルカラーを描く根性は長く続かず、特殊紙表紙コピー誌に。
また少し部数が減った。
表紙用紙を買いに行く余裕がなかったので、キンコーズで色上質紙を買った。
両面刷り中綴じだが化粧断ちはしなくなった。
また少し部数が減った。
両面コピーするとページ数が少ないのがもろばれになるので
片面コピーを折ってかさを増やす作戦に出た。
また少し部数が減った。
そして気がつけば、とんでもなく部数が減っていた。
私と友人、同じような道筋を歩んだ二人が夏コミ後に飲みながら話をした。
「こんなことじゃよくないと思うのよ」
「だよねー」
「昔みたいに気合を入れた本を丁寧に長い時間かけて作りたいよね」
「装丁を印刷所のパンフ見比べながら考えたりしてね」
「いいわねー」
「でも、今の部数じゃオフで印刷するの無理だわ」
「フルカラー表紙のオフセット本とか出したいなあ」
「うん。出したいなあ。フルカラー本」
「フルカラーじゃなくてもいい。オフセの新刊が出したいなあ」
「出したいねえ」
「夢だよね。あこがれだよね。ふふ」
「ふふふ」
数年前はコミケ後にはホテルのラウンジで夜景を見ながら酒を飲んでいた。
今はチェーン店の居酒屋の片隅の席に私たちはいる。
雑居ビルの地下の店からはきらめく夜景は見えない。
中身の減ったグラスを揺らしながら私と彼女はうつろに笑った。
(この話は半分くらいフィクションです。たぶん)
2006年08月19日
思えば遠くへ来たもんだ












