2005年10月21日
同人誌と著作権  1
パロディ同人誌と著作権。切っても切り離せない問題です。同人誌に携わっている人間ならば多少なりとも考えた事があるかと思いますので今更なのですが、ここのblogにはどうやら「同人誌」で検索をかけていらっしゃる方が多いようなので、簡単ですが私見を交えて著作権の事を書いてみようかと思います。


まずパロディ同人誌発生までのプロセスを追ってみたいと思います。

1)好きなマンガ・アニメの似顔絵を描く(〜子供が好きなキャラクターの落書きを描くレベル)

2)ハガキに似顔絵を描いて雑誌の「読者コーナー」に投稿する。ファンレターという形で出版社、作者に送ったりする。

3)ファンクラブの会誌に似顔絵イラストやパロディ漫画を載せてもらう。

4)パロディ同人誌を自分で発行する。

5)パロディ漫画を収録したアンソロジーが商業出版される。

(1)は同人者に限らず誰でも子供の時は落書きしますよね。(2)は幼年雑誌や少女マンガ雑誌には多いかと思います。そういえば大昔はジャンプコミックスの巻末にはファンレターやイラストを載せるコーナーがありましたがいつからなくなったんでしょアレ。(3)は今時の同人者にはピンとこないかもしれません。今から20数年前、私の若かりし頃には作家、出版社、アニメ製作会社の公認、非公認織り交ぜて多くのファンクラブというものが存在しており、同人誌は「ファンジン(ファンマガジンの略)」などと呼ばれ、ファンクラブ会誌の延長線上にありました。当時は安い金額で個人出版物を印刷できる同人誌専門印刷所がなく個人で印刷をするのは金銭的に難しかったためファンクラブという形で大勢の人間で印刷代を負担して会誌という形で発表していました。また同人誌即売会というものも数少なく、特に地方の人間は同人誌に触れる機会すらない状況でしたので、ファンクラブで会員同士で作品を見せ合う事がパロディ者の活動の主流でした。そしてそのファンクラブ会誌、ファンジンが時代とともに現在の「同人誌」へと形を変えていきました。それが(4)です。また(5)は(4)の派生形態です。

「著作権侵害」と一言で言いますが、上記の流れでどこからが著作権侵害にあたるのかと言えば、簡単に言えば「全て」が著作権侵害になる可能性があります。しかしそこで考えなければならないのが「著作権侵害罪は親告罪である」という事です。(1)ですが、アメリカにあるどこぞのアニメーション会社が幼稚園だか小学校だかのプールに描いた世界一有名なネズミのキャラクターの絵を消させたという都市伝説がありますが、まあその噂の真偽はともかくとして、子供がチラシの裏にネズミの絵を描いてお母さんに見せる程度であれば著作権侵害には当たりませんし、そんなのを訴える作家も普通いません。(2)は出版社が大歓迎で募集しているわけですから訴えるわけがありません。作者もファンから似顔絵が送られてきたら喜ぶことでしょう。ですので(1)(2)が著作権侵害として問題になることはまずありません。問題は(3)からです。(3)は(2)がファンの主導で進んだ形です。当時は作家、出版社公認のファンクラブというものも数多く存在しており、作家も出版社もファンのそのような活動を喜びこそすれ、著作権侵害などという意識はどちら側にもありませんでした。非公認のファンクラブでも会誌を作者に送る事などが日常的に行われていました。ところが次第に(4)の現在の同人誌の形になるにつれて、作家側からも「普通のファンクラブ会誌なら嬉しいが、自分のキャラクターのエロ同人誌は嫌だ」「自分のキャラクターの同人誌で金儲けされるのは嫌だ」という人が出てきました。先ほど述べた通り著作権侵害罪は親告罪です。権利保有者が訴えた時点で立件されるわけですから、同人誌は嫌だという作家が訴えれば同人誌も著作権侵害罪になります。しかし(3)と(4)は流れ的に同一線上にあり間に明確な線引きが出来ません。作家に(3、ファンクラブ)までは嬉しい(4、同人誌)は嫌だと言われても、どこまでが(3)でどこからが(4)にあたるかはっきりしないわけです。同人誌に携わるいわゆるオタク層の消費者に対しての宣伝効果を考えて、版権元が自ら商業アンソロジーを発売して同人誌人気を煽る場合(5)もあり、そのような場合は当然著作権侵害にはなりません。しかし(5)でも未公認のもの、俗に「海賊版アンソロ」と言われるものには版権元に訴えられて発行停止になった事例もあります。同人誌が全て著作権侵害罪になるかというとそうではなく、今のところ版権元や著作権保持者次第で黒にも白にもなるというあいまいなものなのです。それが「同人誌は著作権的にグレーゾーン」と言われる所以です。


以上、同人誌に携わる人間には常識な事ですが、同人誌に縁が遠い人は知らない事なのではないかと思います。安易に「同人誌は著作権侵害!」と叩くような事のないようにぜひお願いしたいところです。


何故突然こんな記事を書いているのかといえばあちこちのblogやサイトで「avexのまネコ問題」「avex浜崎大塚パクリ問題」そして「講談社、末次由紀「エデンの花」回収問題」についての記事や意見を最近よく見かけたからです。どれも同人誌とは関係のない問題ですのでこちらで私の意見を書く事はしませんが、この「パクリ」を主題にした問題について「著作権侵害!」と言う人が多い事に驚きました。これらの諸問題は今のところ著作権保持者が訴えていないのですから著作権侵害事件としてではなく、あくまで「企業の姿勢としてどうよ?」「クリエイターとしてのプライドはどうなっちょるの?」という社会通念的、道義的な視点から語るべき問題であると私は思います。「犯罪!犯罪!」と鼻息の荒い人が「著作権侵害」という言葉を振りかざして正義の側に立ったような振る舞いで語るのを読むにつれ少々うんざりした、といったところです。この「パクリ・インスパイヤ祭り」で「著作権侵害」という言葉が葵の御紋の印籠だと勘違いした人々が増えないことを祈ります。

追記・
Nanasi様よりコメントにて
(1)は著作権法で認められている「私的使用の複製」に当たるのではないかとご指摘を頂きました。おっしゃる通りです。
コメント欄での返信にも書きましたが、同人誌界における「同人誌」「グッズ」また「スケッチブックに描いたイラスト」等がどこまで「私的使用の複製」に相当するのかわからない現状を考えて「(1)は私的使用の複製に相当する(ので著作権侵害にならない)」とはっきり明言することは避けさせていただきました。ご了承下さい。

10/24・上記をふまえ、記事内の文章を少々変更しました。
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1.  漫画家末次由紀氏の盗作(トレス)問題   [ 俺の話を聴け〜! ]    2005年10月21日 04:06
どこのブログやニュースサイトでも取り上げてるこの問題。言いたいことは山ほどあるけど、現実的な教訓をここから学ぶとすれば「認めたら負け」ってこと。 末次由紀氏がどんだけパクってたのかはこのサイトに 絵と解説付きで詳しくのってるが、どうみても完全にパク....

Comment

1. Posted by Nanasi     2005年10月21日 13:28
1)は著作権侵害にはならないのでは。少なくとも違法ではありません(根拠は著作権法第30条・私的複製)。
2)も出版物に掲載される以外は1)と同じと考えます。出版物への掲載ですが、これは作者の明示もしくは暗示の許諾があるのでは。
(元作品の掲載誌への投稿の場合。それ以外だったら侵害になると思います)
2. Posted by 不思議     2005年10月21日 22:18
2chはすぐに予告犯情報を警察に連絡(第2予告はavexのグループ会社の会員回線から)
http://2ch.net/nomatako/

「明らかに不法かつ著しく反社会的であって到底見過ごすことができるものではないので、警察に被害届けを出すことにしました」とavex、「社員、家族に危害を加えようとする行為は明らかに不法かつ反社会的である」と社長は、被害届を出さず
http://blogs.yahoo.co.jp/ms617hero/13973739.html

なぜウソをついてまで出さない?
http://rdnzl.exblog.jp/1338153

自作自演説広まる中、社員が予告の証拠を削除依頼(証拠を残して通報が自然なのに、なぜ証拠隠滅を? 犯人を手助け?)
http://blog.goo.ne.jp/cacalia2002/e/e10923989524bf737effa5859ea5a481

被害届がなければ、犯人を逮捕できません
avexの被害届未提出および証拠隠滅は、反社会的犯罪を容認・助長するものです
これからもこの企業の商品を買いますか?
3. Posted by 夜沙     2005年10月21日 23:54
>nanasi様 1/2
同人誌の現場では、都心部の即売会ではほとんど見かけませんが、地方の即売会特に小中学生などの低年齢層の参加が多い場所では、現実に子供(小中学生)がその場で描いた落書きを売っている事があります。ではその落書きは可(「私的使用の複製」に相当する)なのか、有料なら不可で無料なら可なのか、落書きにラミネート加工してカードという体裁にしたものは不可なのか、落書きを2〜3枚ホチキスでとめて「イラスト集」という名目にすれば同人誌扱いになるのか…など、どこまでが同人誌でどこまでが落書きに相当するのか細かい話をし始めるとキリがありません。またその落書き1枚から数万部発行の豪華な本に至るまで全てを包括している事が同人誌界の醍醐味でもあります。

(文字数超過エラーが出てしまったので続きます)
4. Posted by 夜沙     2005年10月21日 23:57
>nanasi様 2/3 (続きです)
そのような同人誌界の現状を踏まえ安易に(1)は大丈夫とは書かずに、今回は知らない人にもわかりやすいように極力簡単に「訴えられたらダメ、訴えられなければオッケー」の二元論で書かせて頂きました。この二元論はかなりおおざっぱで乱雑なものですが、それ以上を詳しく知りたい方には個人的に法律や実際の判例などを調べて頂く方がよろしいかと存じます。

(まだエラーが出るので更に続きます)
5. Posted by 夜沙     2005年10月21日 23:59
>nanasi様 3/3 (続きです)
(2)につきましては、元作品の掲載誌外でも読者投稿型雑誌(ふぁんろーど等)の例がありますので、そちらも「募集してるんだからオッケーなんだろ?」という簡単な説明にさせて頂きました。そのような読者投稿型の雑誌の出版社と掲載誌側の出版社の間にどのようなやり取りがあるのかは出版業界から遠い私の知るところではありませんが、業界内の慣習ですとか暗黙の了解といったものが存在しているのかもしれません。
私は正直法律には疎いもので、またとんでもない間違いを書いておりましたらご指摘いただけますと幸いです。

エラーが出まくったのでぶち切れ投稿で申し訳ございませんでした。(ていうかlivedoorブログって今までコメント文字数制限こんな少なかった?)
6. Posted by 夜沙     2005年10月22日 00:01
>不思議様

企業のモラルや倫理観を消費者が追及するのに、「著作権違反!犯罪!」といった言葉で語るのはどうかと思うという話です。もっと普通に「おたくの会社のモラルってどうなってんのよ?」と語ればいいのではないかと。決して件の会社を擁護しているわけではございません。イニDのDVDの続きは買ってしまうかもしれませんが(笑)
7. Posted by りつこ     2005年10月22日 01:39
やっほーお久しぶり。
真面目なコメントばかりのとこにアホコメントでごめん。
D gray-manのコミックスには巻末に読者投稿あったよ〜。
昔のジャンプコミックス巻末と言えば、芸能人のお薦めコメントみたいなの入ってる時代なかったー?…かなり昔。
8. Posted by 夜沙     2005年10月22日 01:43
>りつこさん
こちらこそお久しぶりー。
芸能人のコメント!あった!あったよ!「僕も××読んでます」みたいなの(笑)ジャンプコミックスといえばキン肉マンの悪魔超人コンテストみたいなののコーナーが忘れられない私もいい年ですな。ははは。
9. Posted by そんそん     2005年10月24日 16:51
こんにちは。
今回の盗用問題ですが、よく同人も引き合いに出されるのですけど、
実際「トレース」をする同人なんてあるのでしょうか?
自分は、同人を作る人ではないので、実体がわからないのです。
その辺の実情を同人製作者の方で語っている人は、残念ながらいら
っしゃらなくて、疑問は解けません。
10. Posted by 夜沙     2005年10月24日 22:15
>そんそん様
「あるのでしょうか」というご質問の答えは「ある」です。
パクリをするかしないかは
「創作者としてのプライド」の話なので
商業誌(プロ)だろうが同人誌(アマチュア)だろうが
やる人はやるしやらない人はやらないとしか言い様がないんです。
(万引きと同じだと私は思っているんですが)
なので正直、同人誌とは関係のない事件で
同人誌を引き合いに出されてるのは
迷惑千万ですね。

私も今回のパクリ諸問題を論じているblogで
よく同人誌が引き合いに出されているのを見かけて
それで今回のエントリーを書いたようなものなので
そんそんさんのような方に読んで頂けたのは幸いです(笑)
11. Posted by 夜沙     2005年10月24日 22:21
追記・
そんそんさんのおっしゃる「トレース」とは「パクリ」という意味であり、
技術としての「トレース」
(自分で撮影した写真を輪郭抽出してトレースして線画にする、等)
ではないという解釈でお答えしました。

まあもっとも
技術としての「トレース」もやる人はやるしやらない人はやらないとしか
言い様がありませんけれども(笑)

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